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2015.08.29 Saturday

2015.8.25 夢

 

祖母の家で弟と互いに怖い話を披露し合っていた。畳の居間にテーブルを挟んで座り、なんだかこうして2人でゆっくり話すのも久しぶりだなと思った。

おもしろ半分で互いに持ち寄った心霊話をしていたが、話をするとなぜか毎回頭の中にある図と人物が浮かんでくる。その図は了の字を直線に近づけたようなもので、記憶を辿るとこの家の古い雑記帳に同じようなものが描かれていたことを思い出した。

気になった僕は普段あまり使われることのない、物置のような状態の部屋の一角からその雑記帳をひっぱり出して、弟に今頭の中で起こったことを説明しようとした。ちょうどその図が描かれているところを見つけ、説明しようと指し示した瞬間、部屋の襖が勢いよく開いた。そこには先ほどの頭の中に浮かんできた男性が立っている。その男を見上げる。4、50歳くらいのがっしりした体格の短髪の男性で、淡い水色のポロシャツを着ている。四角ばった輪郭、切れ長の目、起伏の少ない平坦な顔にスッと細い鼻が立ち上がり、日焼けし小さなシミやシワの出来た顔には、年相応の年月を生きてきた人間らしさが現れていた。しかし確実に人間ではなかった。およそ生物としての生気や感情を持たない、人の形をしたものであった。その目はこちらを見ているようであり、見る機能は持たない目の形をしたものをただコチラに向けているだけのようにも思われた。




その男を見た瞬間、状況を考えるよりも早く、無意識に近い状態でその部屋を飛び出した。本能的に死を感じた。体の芯から恐怖が沸き上がる。

廊下に駆け出したが、家の中の様子ががいつもと違う。全体に黄色みがかって薄暗い。夕暮れ時に景色が赤く染まるが、それが黄土色になったと考えてもらいたい。空気が重い。なにか、空間が歪んでいる。バットを地面に立てそれに額を当てグルグル廻り、回転をやめるとしばらく景色が歪んで見える現象があるが、この場合歪んでいるのは景色ではなく自分の三半規管である。しかし今いるこの空間は、自分ではなく空間側が目を回している。視界を構成する家具や柱の直線が、確かに直線ではあるのだがなにか心もとない。パースが狂い前後が不明瞭だ。大まかな部屋の構成は正しいのだが、微妙に家具の配置や襖の柄、隙間の広さなどが違っている。部屋から部屋へと移っても、どこも同じく違和感がある。何者かが僕を騙す為に元の家をマネて作った偽物なのだということが分かる。台所の机などはやけに高さが低くなっていて「騙す気ならもっと真面目に作れよ!」と思わずツッコミたくなるが、その中国産のパクリ商品のような出来の悪さが、かえってコチラへの悪意を滲み出しているように思われた。いるはずの家族も誰もいない。


このままでは現実の世界に戻れなくなる。そう感じたが、どの部屋に行っても偽物の空間が続き、焦る気持ばかりが膨らむ。脂ぎったイヤな汗が滲む。先ほどの男は別に追ってきてはいないのか、足音などは聞こえない。ただ猶予はないということは分かる。すると頭の中で声がする。

「台所に外側の入り口から入れば元に戻る」

この声が誰からものかは分からない。先ほどの男の声のような気もする。本来この言葉にいくらか疑いを持つべきだが、ほかに何も手がかりもない今、この声を頼りに一端茶の間から土間に出る。台所に廻って入る為には一端土間に出る必要があるからだ。すると土間には中年の男性達が3人程笑顔で談笑しながら外へ出ていこうとしていた。見覚えの無い顔だが彼らは僕の親族や近しい人達なのだと感じた。

「こっちから元の世界にもどれますよ!」と声をかけようとしたが、笑顔の彼らは目が虚ろというか、既に半分コチラの人間ではなくなってきていて、もう戻って来れないところにいるのだと分かった。土間から見える外の景色はやはり異様なもので、日中の屋外らしい明るさは有しているのに薄暗さを感じる紫がかった空間となっている。闇が偽りの明るさを演じているようだ。

台所の扉が見えた。僕にはそれが明るく輝く唯一の救いの扉に見え、ほぼ飛び込むような形でその扉の中に駆け込んだ。

今までの黄色く薄暗く歪んでいた重い空間が、パッと瞬間的に明るい昼白色の正しいパースを持つ世界に切り替わった。そこには母と祖母もいた。家族は呆然とする僕を不思議そうに見ている。いままで引き攣っていた心と体が弛緩する。そしてすこし冷静に状況を考えることができるようになった。

弟はどうした?従兄弟も!(最初は従兄弟はいなかったが、この時点では一緒に逃げ出したことになっていた)。もう一度入ってきた扉をあけ土間側に顔を出すと、また黄色く歪んだ空間が広がる。

「台所に土間側からはいれ!台所に土間側からはいれ!」と見えない彼らにむかって大声で叫んだ。どうかこの声が届いてくれ。そう願いながらも、再びその空間に戻って彼らを引っ張って来る勇気は無かった。土間側の出入り口からできるだけ離れ、座り込んだ。1センチでもさっきまでの世界から離れたい。そして多少落ち着いて今起こったことは何だったのか考える。現実にこんなことが起こりうるのか・・・。

すると台所の土間側の扉から弟と従兄弟も飛び込んできた。ほっとして、そして、この今起こった出来事を家族に話すべきだと考えた。

居間に家族に集まってもらい、先ほど起こったことを話すことにした。そこには父、母、祖母、叔父叔母、よく知らない数人の人々が集まった。

順を追って話していき、先ほどの雑記帳に書かれた図の話にさしかかったところ、じわっとまた空気が重くなり外は薄暗くなった。

戸がガタガタと鳴る。すると窓ガラスにウジャウジャと無数の小さな虫の集合のようなものが現れ、しだいにそれが例の図を形作った。

後方の地面に引きずりこまれる力を感じる。またあの空間に連れ込まれる・・・!しかし今回は先ほどの黄土色の空間ではなく、黒の空間だと感じた。必至に這いつくばり地面を掴み、その力に抗う。

すると表に車が止まったのが分かった。そこにはヤクルトスワローズスタッフが来ている。中から真中監督が現れる。監督の瞳の奥には闇が満ちている。例の男性と同じ顔という訳ではないが、何か、近しいものだと思われた。

家族には僕が引き込まれているのが見えないのか、急に話をやめた僕を心配そうに見ている。

この話を他に聞かせようとしたのが間違いだったのか、自分の中だけに留めて封印しておくべきものだったのか。

ヤクルトスワローズスタッフは徐々に近づいてきてる。また引き戻される。



終わり

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